顧客ヒアリングからWebサイトの要件整理表をAIで作る場合は、ヒアリングメモをそのままAIに要約させるのではなく、目的、対象ユーザー、ページ、機能、素材、運用条件、制約、未確定事項に分け、元の発言と照合できる形で整理することが重要です。
Web制作の打ち合わせでは、顧客の希望、現状の課題、制作会社からの提案、まだ決まっていない事項が同じメモの中に混在しやすくなります。その状態から要件を整理すると、担当者によって解釈が変わったり、未確定の内容を確定事項として扱ったりする可能性があります。
この記事では、顧客ヒアリングからWebサイトの要件整理表をAIで作るための項目設計、入力方法、実務で使えるプロンプト、確認手順、失敗を防ぐポイントまで解説します。Webディレクター、営業担当、制作進行担当など、ヒアリング後の情報整理に時間がかかっている企業に役立つ内容です。
- AIへ渡す前に、顧客の発言と制作会社側の提案を分ける
- 目的、ユーザー、ページ、機能、素材、運用、制約、未確定事項を共通項目にする
- AIには推測で不足情報を補完させず、不明点を確認事項として残させる
- 要件整理表には元のヒアリング内容との対応関係を残す
- AIの出力後は担当者が元資料と照合してから正式な制作要件にする

顧客ヒアリングの要件整理にAIが向いている理由
Web制作のヒアリングでは、一つの打ち合わせから多くの情報が発生します。AIは長いメモから項目を抽出し、あらかじめ決めた形式へ分類する作業に活用できます。
ただし、AIに要件を決定させるのではなく、人が確認しやすい状態を作るための整理役として使うことが基本です。
ヒアリングメモには異なる種類の情報が混ざる
例えば、顧客が現在困っていること、今回実現したいこと、制作会社から提案した内容、今後確認する内容は意味が異なります。しかし、打ち合わせメモでは時系列のまま記録されるため、後から見返すと区別しにくくなります。
AIへ分類ルールを与えることで、同じメモから必要な項目を整理するための下書きを作れます。
| 情報の種類 | 内容 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 現状 | 現在のWebサイトや運用で起きていること | 事実として整理する |
| 課題 | 問い合わせが少ない、更新しづらいなどの困りごと | 顧客が認識している課題として残す |
| 希望 | 掲載したい情報や実現したい機能 | 顧客要望として整理する |
| 提案 | 制作会社側から提示したページや機能の案 | 顧客の確定要件と分ける |
| 未確定 | ページ数、素材、担当者、機能仕様など未決定の内容 | 確認事項として残す |
要件整理表にすると制作メンバーへ共有しやすい
営業担当やWebディレクターが聞いた内容を、デザイナーやコーダー、エンジニアへそのまま転送しても、必要な情報を探す作業が発生します。
要件整理表へ変換しておけば、どこまで決まっているのか、次回の打ち合わせで何を確認するのかを共有しやすくなります。
AIの役割は情報を整理することです。顧客が話していないページ、機能、納期、予算などをAIが推測して追加した場合、それを正式要件として扱わないようにします。
Webサイトの要件整理表に入れたい項目
AIで要件整理表を作る前に、何を整理するかを決めます。毎回異なる形式でAIに要約させるより、共通の項目を決めておく方が案件間のばらつきを抑えやすくなります。
基本となる要件項目
| 大分類 | 整理する内容 | 確認例 |
|---|---|---|
| 制作目的 | Webサイトで達成したいこと | 問い合わせ、採用、認知、情報提供など |
| 対象ユーザー | 主に誰へ情報を届けるか | 法人担当者、求職者、既存顧客など |
| 主要導線 | 利用者に取ってほしい行動 | 問い合わせ、資料確認、応募など |
| 必要ページ | 制作するページ候補 | トップ、サービス、会社情報、問い合わせなど |
| 必要機能 | サイト上で必要になる機能 | フォーム、検索、更新機能など |
| 掲載コンテンツ | ページへ掲載する情報 | 文章、写真、実績、FAQなど |
| 素材 | 制作に必要な支給物 | ロゴ、写真、文章、会社資料など |
| デザイン条件 | ブランドや表現上の希望 | 雰囲気、色調、既存ガイドなど |
| 更新・運用 | 公開後に誰が何を更新するか | お知らせ、事例、求人など |
| 技術条件 | 制作環境や連携条件 | CMS、既存サーバー、外部サービスなど |
| スケジュール | 公開希望時期や確認期限 | 確定日と希望日を分ける |
| 予算・範囲 | 予算条件と制作対象 | 確認済みの場合のみ記載する |
| 未確定事項 | 追加確認が必要な項目 | 次回確認事項として管理する |
項目だけでなく状態も持たせる
要件整理表では、内容だけでなく現在の状態を持たせると、AIの推測や制作会社側の案を顧客の確定事項と混同しにくくなります。
| 状態 | 意味 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 確認済み | 顧客から明確に確認できている | 要件の候補として整理する |
| 提案案 | 制作会社側から提示した案 | 顧客の回答を待つ |
| 要確認 | 情報不足、判断不能、回答待ち | 次回確認事項へ移す |
ヒアリング中の検討案を確認済みに変換しないことが重要です。例えば、制作担当者がブログ機能を提案しただけであれば、顧客が了承するまで正式な機能要件として確定させません。
AIへ入力する前に情報を分ける
ヒアリングメモをそのまま貼り付けることもできますが、案件によっては顧客名、担当者名、連絡先、社内情報などが含まれています。業務利用では、利用するAIサービスと自社ルールを確認し、入力可能な情報を整理してから使用します。
最低限分けたい4種類の情報
- 顧客が実際に発言した内容
- 現在のWebサイトや業務に関する事実
- 制作会社側から出した提案や仮案
- まだ確認できていない事項
この4種類を区別するだけでも、AIが顧客要望と制作側の提案を一つにまとめてしまうリスクを減らしやすくなります。
個人情報や機密情報を入力する前に確認する
顧客ヒアリングには担当者名、メールアドレス、電話番号、社内事情、未公開情報などが含まれる場合があります。AIへ入力する前に、本当に要件整理へ必要な情報かを判断し、不要な識別情報は除外や置き換えを検討してください。
個人情報を含む情報を生成AIへ入力する際の考え方については、個人情報保護委員会の生成AIサービス利用に関する注意喚起も確認できます。
サーバーやCMSのログインID、パスワード、APIキーなど、要件整理に不要な認証情報は入力しないようにします。Web制作の要件整理では、認証情報そのものではなく、利用環境や連携の有無だけで足りることが多くあります。
株式会社ジェイテックサービスのAI顧問サービスでは、対象業務を整理し、AIへの入力形式、プロンプト、確認方法まで含めて実務で繰り返し使える形への落とし込みを支援しています。
ヒアリングから要件整理表を作る5つの手順
実務では、AIへ一度入力して完成させるより、ヒアリング内容の整理、AIによる分類、人による確認を分ける方が扱いやすくなります。
-
ヒアリングメモと関連資料を集める
打ち合わせメモ、事前アンケート、既存サイトの課題、顧客から受領した資料など、今回の制作判断に必要な情報をまとめます。
-
顧客発言と制作会社側の提案を分ける
誰の発言なのか分からないメモは、AIも正しく区別できません。可能な範囲で顧客要望、制作側提案、未確定事項を分けます。
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AIへ整理項目と禁止事項を指定する
目的、対象ユーザー、ページ、機能、素材、運用、制約などの出力項目を指定します。同時に、書かれていない内容を推測して補完しないよう明示します。
-
不足情報を確認事項として抽出する
AIに無理に要件を完成させるのではなく、不明点を別欄へ出させます。これを次回ヒアリングの質問リストとして利用できます。
-
元資料と照合して正式な要件へ反映する
最後に担当者が元のヒアリングメモと照合します。内容が確認できたものだけを制作要件へ反映し、提案案と未確定事項は分けて管理します。

実務で使える要件整理プロンプト
プロンプトでは、きれいな文章を作らせることより、事実と推測を混ぜないルールを明確にすることが重要です。以下はWeb制作会社がヒアリングメモを整理する際の基本形です。
以下の顧客ヒアリングメモを確認し、Webサイト制作の要件整理表を作成してください。
目的は、顧客の発言内容を制作担当者が確認しやすい形へ整理することです。
ルール
・ヒアリングメモに書かれていない事実を追加しない
・推測で不足情報を補完しない
・顧客の要望と制作会社側の提案を分ける
・明確に決まっていない内容は要確認とする
・複数の解釈が可能な内容は確認事項として残す
・ページ名や機能名を勝手に確定しない
・納期、予算、ページ数などが記載されていない場合は未確認とする
以下の項目で整理してください。
1. 制作目的
2. 現在の課題
3. 対象ユーザー
4. ユーザーに取ってほしい行動
5. 必要ページ候補
6. 必要機能
7. 掲載予定コンテンツ
8. 顧客からの支給素材
9. デザイン上の希望
10. 更新・運用方法
11. 技術条件
12. スケジュール
13. 予算・制作範囲
14. 制作会社側からの提案
15. 未確定事項
16. 次回確認する質問
各項目について、可能な限り以下を表示してください。
・整理した内容
・根拠となるヒアリング内容
・状態:確認済み/提案案/要確認
ヒアリングメモ:
ここに入力
根拠となるヒアリング内容を残す
AIが整理した結果だけを見ると、どの発言を根拠にしたのか分からなくなる場合があります。根拠となったメモの内容も併記させると、担当者が確認しやすくなります。
不明な部分を空欄ではなく要確認にする
空欄だけでは入力漏れなのか、顧客へまだ確認していないのか判断できません。AIには不明点を要確認として抽出させ、次回打ち合わせの質問へつなげます。
案件ごとに毎回プロンプトを作り直すのではなく、自社のヒアリング項目と要件整理表に合わせてテンプレート化すると、担当者が変わっても同じ流れで使いやすくなります。
AIで整理した要件を確認するポイント
AIが表形式できれいに整理していても、内容が正しいとは限りません。見た目の完成度ではなく、元のヒアリング内容と一致しているかを確認します。
担当者が確認したい項目
- 顧客が話していない内容が追加されていないか
- 制作会社側の提案が顧客の確定要望になっていないか
- 希望と必須条件を混同していないか
- ページ、機能、素材の抜けがないか
- 公開時期を確定納期として扱っていないか
- 予算の希望と正式な発注金額を混同していないか
- 誰が素材を準備するのか明確になっているか
- 公開後の更新担当者が確認されているか
- 未確定事項が確認事項として残っているか
- 次回ヒアリングで確認すべき内容が整理されているか
モデルケースで見る整理前後の違い
以下は実在の案件ではなく、整理方法を説明するためのモデルケースです。
| ヒアリング内容 | AIでの整理 | 状態 | 次の対応 |
|---|---|---|---|
| 採用ページをもう少し充実させたい | 採用情報の拡充を希望 | 確認済み | 必要コンテンツを追加確認 |
| 社員インタビューがあると良さそうと制作側から提案 | 社員インタビューページ案 | 提案案 | 顧客へ採用可否を確認 |
| 更新は社内でやりたい | 社内更新を希望 | 確認済み | 更新対象を確認 |
| 公開日は特に発言なし | 公開時期未確認 | 要確認 | 希望公開日を確認 |
このように、AIに結論を補完させるのではなく、次に確認すべき項目まで整理させることで、次回の顧客対応にもつなげられます。
よくある失敗例と対策
要件整理でAIを使う際は、文章が読みやすくなったことと、要件が正確になったことを分けて考える必要があります。特に次のような使い方には注意します。
失敗1:ヒアリングメモを渡して要件定義書を完成させる
情報が不足している状態で完成版を求めると、AIが自然な文章で不足部分を補ってしまう可能性があります。完成させるのではなく、不足している情報を残した要件整理表を作らせます。
失敗2:顧客要望と制作会社側の提案を混ぜる
打ち合わせでは制作会社側からページや機能を提案することがあります。発言者を区別せずAIへ入力すると、提案が顧客要望として整理される可能性があります。
失敗3:AIが付けたページ名をそのまま採用する
顧客が必要な情報を話していても、正式なページ構成まで決まっているとは限りません。AIが分かりやすさのためにページ名を付けた場合は、仮案として扱います。
失敗4:要件整理表を作った時点で確認を終える
AIが作った表は確認作業の開始地点です。元のメモ、受領資料、メールなどと照合し、内容を確認してから制作資料へ転記します。
失敗5:案件ごとに出力形式が変わる
担当者ごとに違うプロンプトを使うと、要件整理表の項目も変わります。複数人が利用する場合は、共通の分類項目と確認ルールを決めておく方が再利用しやすくなります。
生成AIの利用では、出力内容の確認だけでなく、入力する情報の取扱いも重要です。利用するサービスの設定や利用条件、自社の情報管理ルールを確認したうえで業務へ組み込んでください。AI利用に関する考え方は、経済産業省のAI事業者ガイドラインでも確認できます。
Webサイトの要件整理にAIを使う際のよくある質問
Web制作のヒアリング整理でAIを使う際に確認されやすいポイントをまとめます。
ヒアリングメモをそのままAIへ入力してもよいですか?
内容によります。顧客名、担当者情報、連絡先、未公開情報などが含まれる場合は、利用するAIサービスと社内ルールを確認してください。要件整理に不要な識別情報は、削除や置き換えを検討します。
AIだけでWebサイトの要件定義まで完成できますか?
AIだけで確定させることはおすすめできません。AIはヒアリング内容の分類や不足項目の抽出には活用できますが、顧客の意図、優先順位、予算、技術条件などは担当者が確認し、最終的に人が判断する必要があります。
ヒアリングの録音を文字起こししてそのまま整理できますか?
文字起こしデータから整理する方法はあります。ただし、文字起こし自体に聞き間違いや話者の取り違えが含まれる場合があります。重要な要件は録音や元メモなどと照合してください。
要件整理表にはどこまで細かく書けばよいですか?
案件の段階によって変わります。初回ヒアリング直後であれば、すべてを詳細に決めるより、確認済み、提案案、要確認を分け、追加ヒアリングが必要な項目を明確にすることを優先します。
AIが提案したページ構成も要件整理表へ入れてよいですか?
入れる場合は、顧客から確認済みの要件と分けてください。AIや制作会社側から出した構成は提案案として管理し、顧客確認後に確定項目へ変更すると混同を防ぎやすくなります。
小規模なWeb制作案件でも要件整理表は必要ですか?
大規模な資料にする必要はありませんが、目的、ページ、機能、素材、担当範囲、スケジュール、未確定事項などを一覧化しておくと、認識違いを確認しやすくなります。小規模案件では項目を絞った簡易版でも運用できます。
まとめ
顧客ヒアリングからWebサイトの要件整理表をAIで作る場合は、AIに要件を決めてもらうのではなく、確認しやすい形へ情報を構造化する使い方が適しています。
- 目的、対象ユーザー、ページ、機能、素材、運用、制約などの整理項目を先に決める
- 顧客の発言、制作会社側の提案、未確定事項を分けてAIへ渡す
- AIには書かれていない情報を推測で追加しないよう指定する
- 不明点は要確認として抽出し、次回のヒアリング項目へつなげる
- 最終的には元のヒアリング資料と照合してから正式な制作要件へ反映する
まずは過去または現在の案件を一つ選び、普段使っているヒアリングメモから簡易的な要件整理表を作ってみると、自社で必要な項目や確認ルールを見つけやすくなります。
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Web制作のヒアリング整理のように、定期的に発生する情報整理業務をAI活用の候補として検討することもできます。
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