社内で利用を許可するAIツールの決め方

社内で利用を許可するAIツールは、知名度や生成性能だけで決めるのではなく、業務目的、扱う情報、データの管理方法、アカウント管理、既存環境との相性まで確認して選ぶことが重要です。

社員ごとに自由なAIツール利用を認めると、会社が把握していないサービスへ業務情報が入力されたり、個人アカウントへ社内データが蓄積されたりする可能性があります。一方で、AI利用そのものを禁止すると、現場の業務効率化を進めにくくなります。

本記事では、会社として利用を許可するAIツールの判断基準、選定手順、情報区分ごとの利用ルール、導入前に確認しておきたい項目まで解説します。AI活用を進めたいものの、どのツールを認めればよいか迷っている経営者やAI推進担当者に役立つ内容です。

この記事のポイント
  • AIツールは性能だけでなく、データの扱いと管理機能まで確認する
  • サービス名だけでなく、実際に契約するプラン単位で確認する
  • 許可ツールと同時に、入力可能な情報と禁止情報を決める
  • 既存のMicrosoft 365やGoogle Workspaceなどとの相性も確認する
  • 少人数で試してから対象部門や利用範囲を広げる
AIツールの安全性や業務適合性をチームで確認する日本企業の担当者
複数の観点から社内利用するAIツールを確認することが重要です。

なぜ社内で利用可能なAIツールを決める必要があるのか

生成AIの活用が広がるにつれて、会社が正式に導入する前から社員が個人でAIツールを使い始めるケースも考えられます。その状態を放置すると、会社側がどのサービスに、どのような情報が入力されているのか把握しにくくなります。

そのため、企業ではAI利用を全面的に禁止するのではなく、会社として利用可能なAIツールと利用条件を明確にすることが重要です。

特に確認したいのは、次のような点です。

  • どのAIツールを利用してよいのか
  • 個人アカウントと会社アカウントのどちらを使用するのか
  • どのような情報を入力してよいのか
  • 入力してはいけない情報は何か
  • AIが生成した内容を誰が確認するのか

ツールの許可だけを決めても、利用条件が曖昧であれば社員は安全な使い方を判断できません。AIツール選定と社内利用ルールはセットで考える必要があります。

ポイント: AIツールの選定はIT部門だけの問題ではありません。現場が使いたい業務を整理し、必要に応じて情報システム、法務、管理部門などと連携して判断することが重要です。

社内で許可するAIツールを決める7つの基準

AIツールを比較するときは、回答品質や知名度だけで判断しないことが重要です。実務では、業務適合性、安全性、管理性、既存環境との相性などを共通の基準で比較すると判断しやすくなります。

社内利用するAIツールの主な判断基準
判断基準 確認する内容
業務適合性 文章作成、情報整理、調査、資料作成など目的の業務に対応できるか
データの扱い 入力データの保存やモデル改善への利用条件などを確認できるか
アカウント管理 会社側でユーザー追加、削除、権限管理などを行えるか
既存環境との相性 既存のメール、文書管理、クラウドサービスなどと連携しやすいか
出力品質 自社が実際に利用する業務で必要な品質を満たしているか
費用 ライセンス料金だけでなく利用人数や管理コストまで含めて妥当か
運用のしやすさ 社員教育、問い合わせ対応、契約更新、利用状況の確認を継続できるか

利用したい業務に合っているか

最初に確認したいのは、AIツールそのものの性能ではなく、自社で何に使いたいのかという目的です。

たとえば、営業メールの下書きを作りたい企業と、Microsoft 365内の情報を活用したい企業、社内資料を検索したい企業では必要な機能が異なります。

何でもできるAIを探すのではなく、具体的な対象業務を決めてから比較すると選定しやすくなります。

入力データの扱いを確認できるか

企業利用では、入力したデータがどのように扱われるのかを確認する必要があります。

同じサービスでも、無料版、個人向けプラン、法人向けプランなどによって、管理機能やデータの取り扱い条件が異なる場合があります。

そのためサービス名だけではなく、自社が実際に契約するプランについて最新の公式情報を確認することが大切です。

会社側でアカウントを管理できるか

社員が個人アカウントでAIを使っていると、異動や退職時の管理が難しくなる可能性があります。

企業利用では、会社側で利用者を追加・削除できることや、必要な権限を設定できることなど、管理者向けの機能も確認しましょう。

AIツールは、サービスの知名度だけではなく、自社の既存環境や利用目的まで考えて選定することが重要です。株式会社ジェイテックサービスのAI顧問サービスでは、業務内容を整理したうえでAIツールの選択肢や活用方法を一緒に検討します。

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AIツールを選定する5つの手順

AIツールの一覧を先に作るのではなく、自社の業務から逆算して候補を絞ると、必要なツールを選びやすくなります。

  1. AIを利用する業務を決める
    営業メールの作成、会議内容の要約、社内資料の整理など、最初にAIを使いたい業務を具体的にします。
  2. 扱う情報を確認する
    その業務でAIへ入力する可能性がある情報を整理します。公開情報だけなのか、社内情報や個人情報を含むのかによって必要な環境が変わります。
  3. 候補ツールを同じ条件で比較する
    業務適合性、データの扱い、管理機能、既存環境との相性、費用など共通の項目で比較します。
  4. 少人数で試す
    いきなり全社員へ展開せず、特定の部署や担当者で試します。実際の使いやすさや回答品質、確認作業の負担を確認します。
  5. 利用ルールと一緒に展開する
    AIツールの名称だけでなく、利用するアカウント、入力可能な情報、禁止事項、最終確認方法、問い合わせ先などを社員へ共有します。
承認したAIツールの利用方法を社内チームで確認する日本企業の担当者
AIツール選定後は、社員が迷わないよう利用条件まで整理して共有します。

入力する情報ごとに利用ルールを決める

会社としてAIツールを承認しても、すべての情報を自由に入力できるとは限りません。社員が判断できるように、情報の種類ごとに利用条件を整理しておくことが重要です。

AIへ入力する情報の分類例
情報区分 具体例 利用ルールの考え方
公開情報 Webサイト、公開済み資料、公開商品情報 承認済みAIツールで比較的利用しやすい
一般的な社内情報 社内マニュアル、会議メモ、業務手順 会社管理アカウントなど一定の条件下で利用する
個人・顧客情報 氏名、連絡先、顧客情報、人事情報 データの扱いや社内規程を確認したうえで個別判断する
重要な機密情報 未公開事業情報、認証情報、重要な技術情報 原則入力禁止または専用環境での利用を検討する

上記はモデルケースです。実際には、自社の情報管理規程や秘密保持契約、顧客との契約条件などを踏まえて判断する必要があります。

禁止事項だけでなく利用可能な例も示す

AI利用ルールを作るときに、機密情報を入力しない、個人情報を入力しないという禁止事項だけを並べると、社員は何なら利用できるのか分からなくなります。

たとえば、公開済みの商品説明を要約する、個人名を含まない会議内容を整理するなど、利用可能な例も併せて示すと現場で判断しやすくなります。

AIが作った内容の確認責任も決める

生成AIは、事実と異なる内容や不適切な表現を生成する場合があります。

そのため、AIの出力をそのまま顧客へ送信したり公開したりするのではなく、最終的に誰が確認するのかを決めておくことが重要です。

注意: 法務、税務、労務、医療、情報セキュリティなど専門的な判断が必要な内容については、AIの回答だけで判断せず、社内担当者や専門家による確認を行ってください。

AIツール選定でよくある失敗と対策

AIツール選定では、機能不足よりも、導入前の整理不足が原因で活用が定着しないことがあります。代表的な失敗例を確認しておきましょう。

話題になっているAIツールを先に契約する

ツールを先に契約してから使い道を考えると、社員へアカウントを配布しただけで利用が止まってしまうことがあります。

まず利用業務を決め、その業務に必要な機能からツールを選ぶことが重要です。

生成性能だけで比較する

文章の生成品質が高いAIでも、会社としてアカウント管理が難しい、既存環境との連携が複雑、扱いたい情報に適さないといった場合があります。

回答品質と同時に、安全性や運用性も確認しましょう。

複数のAIツールを自由に利用できる状態にする

部門ごとに似たAIサービスを契約すると、費用だけでなく、アカウントやデータの管理も複雑になります。

会社として標準的に利用するAIツールを決め、必要な場合だけ別サービスを申請する仕組みにすると整理しやすくなります。

利用ルールを作って終わる

長いガイドラインを配布するだけでは、社員が実際の業務で使える状態にならないことがあります。

よく利用する業務について具体的な利用例を示し、社員から質問があった際の相談窓口も決めておくと運用しやすくなります。

導入前に確認したいチェックリスト

会社としてAIツールを承認する前に、次の項目を確認してみてください。

  • AIを利用する具体的な業務が決まっている
  • その業務で入力する情報を整理している
  • 契約するプランのデータ利用条件を確認している
  • 入力データや出力データの保存条件を確認している
  • 会社側で利用者を管理できる
  • 異動や退職時にアカウントを停止できる
  • 既存のAIツールやITサービスとの重複を確認している
  • 実際の業務を想定して試用している
  • 入力してよい情報を社員へ説明できる
  • 入力禁止情報を明確にしている
  • AIの出力を誰が確認するか決めている
  • 社員からの問い合わせ先を決めている
  • 利用状況を定期的に見直す担当者を決めている
おすすめの管理方法: 承認したAIツールごとに、ツール名、契約プラン、利用部門、利用目的、入力可能情報、禁止情報、管理責任者、見直し時期を1枚にまとめておくと、後から確認しやすくなります。

よくある質問 FAQ

社内で利用するAIツールを決める際によくある疑問を整理します。

ChatGPT、Gemini、Copilotのどれを会社で許可するべきですか?
一律にどれが最適とは決められません。利用したい業務、現在使用しているIT環境、扱う情報、必要な管理機能、利用人数などによって適した選択肢が変わります。サービス名だけでなく、実際に利用するプランの条件まで比較することが重要です。
無料の生成AIを社員が業務で使っても問題ありませんか?
無料版と法人向けプランでは、データの扱いや管理機能などが異なる場合があります。業務利用を認める前に、利用規約やデータの取り扱い条件を確認し、自社で扱う情報と照らし合わせて判断してください。
会社で利用するAIツールは1つに統一した方がよいですか?
標準ツールを決めておくと、アカウント管理や社員教育、問い合わせ対応を整理しやすくなります。ただし、専門的な業務では別のツールが必要になる場合もあります。基本となるツールを決めたうえで、例外利用の申請方法を用意する方法があります。
AIツールを会社で契約すれば利用ルールは不要ですか?
利用ルールも必要です。会社契約のAIツールであっても、どの情報を入力してよいか、どのような業務で利用してよいか、AIの出力を誰が確認するかまでは自動的に決まりません。ツールと利用条件をセットで整理してください。
一度許可したAIツールはそのまま使い続けてもよいですか?
定期的な見直しが必要です。AIサービスは機能や利用条件が変更されることがあり、自社側の利用方法も変化します。契約更新などのタイミングで、データの扱い、費用、利用状況、必要性を確認することをおすすめします。

まとめ

社内で利用を許可するAIツールを決める際は、生成性能や知名度だけで判断せず、自社の業務と情報管理の両面から比較することが重要です。

これから社内でAI利用を進める場合は、次の順番で整理してみてください。

  • AIを利用したい具体的な業務を決める
  • AIへ入力する可能性がある情報を整理する
  • データの扱い、管理機能、既存環境との相性を比較する
  • 少人数の社員で実際の業務を試す
  • 許可ツールと利用ルールをセットで社員へ共有する

重要なのはAIツールを契約することではなく、社員が迷わず、安全かつ実務的に使える状態をつくることです。まずは自社でAIを使いたい業務を1つ選び、その業務に必要な条件を整理するところから始めてみてください。

株式会社ジェイテックサービスについて
株式会社ジェイテックサービスでは、AIの導入から社内定着までを伴走型で支援するAI顧問サービスを提供しています。AIツール選定、業務への活用方法、社内利用ルールやリスク対策など、企業の状況に合わせたAI活用を支援しています。

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