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Teamsで削除したチャットやメッセージは復元できる?情シスが知っておきたい保持と復旧の仕組み

2026.09.11

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「重要な指示を誤って削除してしまった」「退職者の過去のチャット履歴を確認したい」「不正行為の調査で消されたメッセージを復元したい」。
Teamsを全社導入していると、情シス部門にはこのような「削除されたデータの復旧・抽出依頼」が頻繁に寄せられます。

この記事では、Teamsのメッセージは本当に復元できるのか、情シスが設定しておくべき「保持ポリシー」とは何か、有事の際の「電子情報開示(eDiscovery)」の手順を、現場目線で分かりやすく解説します。
いざという時に“データを取り出せない”という事態を防ぐための必須知識です。

結論:Teams画面には戻せないが、「抽出」は可能

まず大前提として、一度削除したメッセージを「Teamsの元のチャット画面に元通りに表示させる(Undoする)」ことはできません。Windowsのゴミ箱のような機能はTeamsのメッセージには存在しないからです。

しかし、情シスが事前に適切な設定をしておけば、管理画面からデータを検索し、ファイル(PSTやCSV等)として抽出・確認することは可能です。そのために必要なのが以下の2つの機能です。

  • 準備:アイテム保持ポリシー(Retention Policy)でデータを裏側に残す
  • 実行:電子情報開示(eDiscovery)でデータを検索して取り出す

Teamsにおける「削除」の基本仕様

ユーザーがTeams上でメッセージを「削除」したとき、画面上には「このメッセージは削除されました」と表示されるか、完全に消えて見えなくなります。
しかし、裏側のデータベース(Exchange Online)から即座に消滅するかどうかは、Microsoft Purview(旧コンプライアンスセンター)で設定された「アイテム保持ポリシー」に依存します。

ポイント:
何も設定していない(デフォルトの)状態では、ユーザーが削除したメッセージは一定期間後に完全に消去され、情シスであっても二度と復元できなくなります。

なぜ保持と復旧の仕組みが必要か(情シスの課題)

保持設定がないと詰むシチュエーション

  • ハラスメント調査:加害者が証拠隠滅のために過去の暴言チャットを削除してしまい、事実確認ができない。
  • 退職者対応:退職者がアカウント削除前に重要な引き継ぎチャットを消してしまい、業務が停止する。
  • 監査対応:取引先とのトラブル発生時、法務部から「1年前のやり取りを出してほしい」と言われたが残っていない。

いざという時の「デジタルフォレンジック(証拠保全)」の観点から、メッセージの保持は企業の防衛線となります。

よくある誤解の整理

よくある誤解(現場と情シスの認識ギャップ)

  • 「削除しても、ゴミ箱フォルダから戻せるでしょ?」→ ❌(Teamsのメッセージにゴミ箱はありません)
  • 「情シスに頼めば、私のTeams画面にメッセージを復活させてくれる」→ ❌(Teamsの画面上には戻せません。CSV等でお渡しすることになります)
  • 「退職者のチャットは、アカウントを消したら全部消える」→ △(保持ポリシーがかかっていれば、裏側に残ります)
  • 「ずっと保存しておけば安心」→ ❌(不要なデータまで残すと、情報漏洩リスクや法務リスク、ストレージコストが増大します)

情シスが知るべき2つの重要機能

① アイテム保持ポリシー(Retention Policy)

データを「いつまで残すか」「いつ自動で消すか」を決めるルールです。

  • 保持:ユーザーが削除しても、指定した期間(例:3年)はExchangeの隠しフォルダにデータが保管されます。
  • 削除:指定期間を過ぎたデータは、ユーザーが残していても強制的に完全削除されます(リスク低減のため)。

② 電子情報開示(eDiscovery)

保持されている膨大なデータの中から、必要な情報を検索・抽出する機能です。

  • 特定のキーワード、日付、ユーザー(送信者/受信者)で絞り込みが可能。
  • 抽出したデータは、PSTファイル(Outlook等で開ける)やCSV形式でダウンロードできます。

データ種類別:保存場所と復元方法(比較表)

Teamsは複数のM365サービスが統合されたUIです。データの種類によって保存場所が異なります。

データの種類 実際の保存場所 復元(抽出)方法 備考
チーム(チャネル)のメッセージ M365グループのExchangeメールボックス eDiscoveryでグループメールボックスを検索 Teams画面への復元不可
個人チャットのメッセージ (1on1, グループチャット) 参加者個人のExchangeメールボックス eDiscoveryで対象ユーザーのメールボックスを検索 Teams画面への復元不可
チャネルで共有されたファイル SharePointサイト SharePointのゴミ箱から復元可能(93日以内) Teamsの「ファイル」タブに元通り復活します
個人チャットで共有されたファイル 送信者のOneDrive OneDriveのゴミ箱から復元可能(93日以内) 退職時はOneDriveのアクセス権移譲が必要

データ保持におけるリスクと対策

データを残せば安全かというと、そうではありません。期間の設定にはバランスが求められます。

  • 保持しすぎのリスク(例:無期限保存):
    万が一、訴訟になった際、本来提出しなくてもよかった数年前の不利なやり取りまで開示対象になる「法務リスク」があります。また、不要な個人情報が残り続けるためプライバシー保護の観点でもNGです。
  • 短すぎのリスク(例:30日で削除):
    退職者が辞めて数ヶ月後に不正が発覚した場合、すでにデータが消去されており、原因究明や損害賠償請求ができなくなります。

一般的な企業では、「Teamsのチャット/チャネルメッセージは1年〜3年保持し、その後自動削除する」といったポリシーを運用することが多いです(業界のコンプライアンス要件によります)。

事案発生から抽出までのフロー

実際にデータ開示が必要になった場合の、情シスの基本フローです。

1. 法務/人事からの調査依頼(対象者、期間、キーワードの特定)
2. Microsoft Purviewで「電子情報開示(Standard/Premium)」ケースを作成
3. 検索クエリの実行(対象のExchangeメールボックスをスキャン)
4. 検索結果のプレビューと精査(不要なノイズを除外)
5. PSTやCSV形式でエクスポートし、依頼元へ提供

データ開示請求があった日の情シスの動き

例:ハラスメント事案での調査依頼があった場合

  • 10:00:人事部より「AさんとBさんの過去半年間のチャット履歴を極秘で抽出してほしい」と依頼。
  • 10:30:Purviewにアクセスし、eDiscoveryケースを新規作成。対象ユーザーにAさんとBさんを指定。
  • 11:00:検索条件(期間や特定キーワード)を設定し、バックグラウンド検索を開始(データ量により時間がかかります)。
  • 14:00:検索完了。プレビュー画面で該当の暴言メッセージ(本人は削除済み)がヒットしていることを確認。
  • 15:00:抽出データを暗号化ZIP等でパッケージングし、セキュアな経路で人事担当者へ引き渡し。

特徴:この作業は対象ユーザーに通知されずに行えるため、秘密裏に証拠保全が可能です。

30日データ保持・コンプライアンス基盤構築ロードマップ

まだ保持ポリシーを設定していない組織向けの、導入ステップです。

Day 1-7:法務部・経営陣とのポリシー策定(何年保持するか、いつ消すか)
Day 8-14:M365ライセンスの確認(E3/E5等、機能要件を満たしているか)
Day 15-21:一部のテストユーザーに対して保持ポリシーを適用し、影響確認
Day 22-30:全社適用と、情シス内でのeDiscovery検索・抽出訓練の実施

あなたの組織のデータ復旧・安全度チェック

いざという時、本当にデータを提出できるか確認しましょう。

  • Teamsメッセージに対する「アイテム保持ポリシー」が設定・有効化されているか
  • 退職者のアカウントを削除する際、訴訟ホールド(証拠保全)を行う手順があるか
  • 情シス担当者の中に、eDiscoveryの操作経験があるメンバーがいるか(ぶっつけ本番は危険です)
  • ファイル(SharePoint)のゴミ箱の仕様(93日で完全消去)を理解しているか

管理に必要なスキルと設定知識

必須になりやすい領域

  • Microsoft Purview コンプライアンスポータルの基本操作
  • Exchange Onlineのアーキテクチャ理解(メッセージがどこに格納されるか)
  • KQL(Keyword Query Language)の基礎(eDiscoveryで精度の高い検索を行うため)
  • 情報漏洩対策(データ抽出後の取り扱いに関するリテラシー)

役立つ資格・ライセンス要件

関連する資格

  • SC-400(Microsoft Information Protection Administrator):Purview全般の知識
  • MS-700(Microsoft Teams Administrator Associate):Teams管理の基礎
※重要:ライセンスについて
アイテム保持ポリシーやeDiscoveryを活用するには、通常 Office 365 E3/E5 または Microsoft 365 E3/E5 といった上位ライセンスが必要です。Business Basic/Standard等では十分な機能が使えない場合があるため、事前の確認が必須です。

保持ポリシーの設定、何から始める?

いきなり「全データを無期限保持」などの極端な設定は避けましょう。

1. 法務や人事と「業界の要件として何年データを保持すべきか」をすり合わせる
2. Purview管理センターで「Teamsチャット」と「Teamsチャネルメッセージ」用のポリシーを作成
3. まずは情シス部門のユーザーグループのみに適用し、動作を確認する
4. 問題なければ全社展開。展開後、テストで適当なメッセージを消し、eDiscoveryで抽出できるか訓練する

目指すべき運用体制

  • ユーザーからの「誤って消したから戻して」という要望には、「アプリ画面への復元は仕様上不可」と社内FAQ等で明確にアナウンスしておく。
  • eDiscoveryの抽出対応は、人事や法務など「正当な権限を持つ部署からの正式な依頼」があった場合のみ実行するワークフローを確立する(情シスの独断で閲覧しない)。

コンプライアンス特化型エンジニアへの道

データの保持と開示の仕組みをマスターすることは、企業の法的リスクを守る重要なキャリアに繋がります。

  • Teams運用担当 → M365コンプライアンス管理者(Purviewスペシャリスト)
  • 監査・フォレンジック対応エンジニア(不正調査の技術的サポート)
  • データガバナンスアーキテクト(データライフサイクル全体の設計)

よくある質問(FAQ)

削除したメッセージを、もう一度Teamsのチャット画面に表示させることは本当にできませんか?

できません。eDiscovery等のツールを使って抽出できるのは「過去にこういう発言があった」というログデータ(CSV等)やメール形式のファイルのみです。TeamsのUI上に戻す(リストアする)ことはMicrosoftの仕様上不可能です。

ファイル(ExcelやPDF)を削除した場合はどうなりますか?

メッセージと異なり、ファイルはSharePoint(またはOneDrive)に保存されています。そのため、SharePointの「ごみ箱」機能を使えば、削除後93日以内であればユーザー自身、または管理者が元の場所に復元することが可能です。

退職してアカウントを削除したユーザーのデータも抽出できますか?

アカウントを削除するとデータも消去されますが、削除前に「非アクティブなメールボックス」として保持設定(訴訟ホールドなど)を行っておけば、アカウント削除後もeDiscoveryで検索・抽出が可能です。退職時のフローに組み込むことが重要です。

まとめ

Teamsで削除されたメッセージは、「Teamsの画面には戻せないが、管理者が設定をしておけばデータとして抽出できる」というのが正しい認識です。
この仕組みを担保するのが「アイテム保持ポリシー」「電子情報開示(eDiscovery)」です。

1. 「復元=画面に戻る」というユーザーの誤解を解き、アナウンスしておく
2. ライセンスを確認し、自社に適した「アイテム保持ポリシー」を設定する
3. 事案発生時に慌てないよう、情シス内でeDiscoveryの抽出訓練を行っておく

「いざという時にデータが出せない」という最悪の事態を防ぐため、まずは自社の保持ポリシーの設定状況を確認してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。コンプライアンス要件や法的なデータ保持期間は企業や業界によって異なるため、法務部門と連携の上、適切なポリシー設計・ライセンス選定を行ってください。


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