日々の業務で寄せられる「問い合わせ」の確認と、担当部署や担当者への振り分け作業。この業務は意外と時間を奪うだけでなく、対応遅れや人的ミスを引き起こす原因になりがちです。
結論から言えば、現代のAI技術(LLM)と自動化ツール(RPAやAPI連携など)を組み合わせることで、問い合わせ内容の分類と振り分けは高精度で自動化できます。
本記事では、AIを活用して問い合わせの振り分けを自動化する仕組みや、具体的な導入手順、そして実務に組み込む際の注意点について解説します。社内のAI活用を推進したい方や、非効率な対応業務に課題を感じている部門責任者の方に役立つ内容です。
- 問い合わせの目視確認と手動振り分けは、業務のボトルネックになりやすい
- 生成AI(LLM)のテキスト解析能力を使えば、内容や意図を高精度で分類できる
- AIとRPA・チャットツールを連携させることで、担当者への通知まで自動化可能
- 導入時は「既存の業務フローの整理」と「分類ルールの言語化」が重要になる

なぜ問い合わせの振り分け業務は負担になるのか?
多くの企業が直面している「問い合わせ対応」の課題について整理します。なぜ目視による確認と手動での振り分けが非効率を生むのでしょうか。
代表的な電話窓口を持たず、Webフォームや共通のメールアドレス(info@など)で問い合わせを一括で受けている企業は少なくありません。この場合、届いたメッセージを誰かが確認し、「これは営業部」「これはサポートチーム」「これは採用担当」と判断して転送する作業が発生します。
この手作業には、次のような課題があります。
- タイムロスの発生: 担当者がメールを確認するまで対応が止まり、顧客を待たせてしまう。
- 属人化と判断のブレ: 「どの部署が担当すべきか」が暗黙の了解になっており、特定の担当者しか正しく振り分けられない。
- 単純作業によるモチベーション低下: 毎日何十件、何百件と届くメールの仕分け作業に追われ、本来のコア業務に集中できない。
こうした課題は、キーワードマッチなどの単純なシステムでは解決が難しいものでした。しかし、文脈を理解できるAIの登場により、状況は大きく変わっています。
AIによる問い合わせ分類と振り分けの仕組み
AIを活用してどのように問い合わせを処理し、担当者へ繋ぐのか、その中核となる技術と仕組みを解説します。
LLM(大規模言語モデル)による文脈理解
問い合わせの分類には、ChatGPTなどの基盤となっているLLM(大規模言語モデル)のテキスト解析能力を利用します。これまでの自動振り分けシステムは「特定のキーワード(例:”料金” “採用”など)が含まれていたら転送する」といったルールベースが主流でしたが、表現の揺れや複雑な質問には対応できませんでした。
AIは、送られてきた文章の「文脈」や「意図」を読み取ります。例えば「来月の請求額について確認したいのですが」という文章から「経理・請求に関する問い合わせ」であると高精度に推論し、事前に設定したカテゴリ(営業、サポート、経理など)へ自動で分類することが可能です。
RPAやAPI連携ツールとの組み合わせ
AIによる「分類」の後は、その結果をもとに「担当者へ届ける」プロセスが必要です。ここではAI単体ではなく、既存のシステム同士を繋ぐ仕組みが活躍します。
代表的な手法としては、以下のようなツールとの連携が挙げられます。
- iPaaS(API連携ツール): Zapier(ザピアー)やMakeなどを用いて、メール受信 → AIへテキスト送信(分類) → 社内チャット(SlackやTeamsなど)の該当チャンネルへ通知、という一連の流れを自動化します。
- AI搭載RPA: デスクトップ上の作業を自動化するRPAツールにAIを組み込み、顧客管理システム(CRM)への自動登録と担当者へのアサインを同時に行うことも可能です。
手作業とAI自動化の比較
手作業による振り分けと、AIを活用した自動化のプロセスを比較し、どのような違いが生まれるのかを整理します。
| 比較項目 | これまでの手作業 | AIを活用した自動化 |
|---|---|---|
| 処理スピード | 担当者が確認するまで滞留する(数時間〜半日かかることも) | 受信後、数秒〜数十秒で瞬時に担当者へ通知される |
| 判断の正確性 | 担当者の経験や知識に依存する。見落としや誤転送が発生しやすい | あらかじめ定めたプロンプト(指示書)に基づき、一貫した基準で分類する |
| 稼働時間 | 営業時間内、かつ担当者の稼働時間のみ | 24時間365日、土日祝日や夜間でも即座に振り分け処理が行われる |
| コスト・労力 | 仕分けのための人件費が継続的に発生し、コア業務を圧迫する | 初期の構築とツールの利用料はかかるが、日々の労力はほぼゼロになる |
自社の業務環境に合わせたAIの活用方法や、自動化の仕組みづくりに迷ったら、プロの専門知識に頼るのもひとつの手です。
株式会社ジェイテックサービスのAI顧問サービスでは、実務に即したAIツールの選定から導入までをサポートします。
AI振り分けシステムを導入する5つの手順
実際に社内で問い合わせのAI振り分けシステムを構築するための、具体的なステップを解説します。
- 現状の問い合わせの棚卸し
まずは、過去数ヶ月分の問い合わせデータを集め、どのような内容が来ているのかを確認します。そして「営業」「サポート」「採用」「スパム・営業メール」など、振り分けるべきカテゴリ(分類先)を明確に定義します。 - 分類ルールの言語化
AIに正しく判断させるため、「どのような内容なら営業に分類するのか」といったルールを言語化します。これがAIへの指示書(プロンプト)の基礎となります。 - ツールと連携方法の選定
既存のメールシステム(GmailやOutlookなど)と、社内で使っているチャットツール(Slack、Teams、Chatworkなど)、そしてそれらを繋ぐ連携ツール(Zapierなど)を選定します。 - プロンプトの作成とテスト運用
AIに対して「入力されたテキストを分析し、指定したカテゴリのどれに該当するか判定して出力せよ」というプロンプトを作成します。過去の問い合わせデータを入力して、正しく分類されるかテストを繰り返して精度を高めます。 - 本番稼働とチューニング
システムを連携させて自動化をスタートします。稼働後も、AIが間違えて分類したケースを定期的に確認し、プロンプトに判断基準を追記するなどのチューニング(改善)を継続することが重要です。

失敗しないための注意点と対策
AI導入を成功させるために、事前に知っておくべきリスクと運用上の注意点を説明します。
個人情報・機密情報の取り扱い
AI(LLM)に問い合わせ内容のテキストを送信して解析させる場合、顧客の氏名や電話番号、機密情報が含まれることがあります。無料版のAIサービスなどを利用すると、入力データがAIの学習に利用されるリスクがあります。必ず、入力データが学習に利用されない設定(API利用など)になっているサービスやプランを選定してください。
AIの誤分類(例外)への備え
AIは非常に賢いですが、100%完璧ではありません。複数の意図が含まれる複雑な問い合わせや、極端に短い文章では、間違った部署に振り分けられる(または分類不能になる)ことがあります。
そのため、「どのカテゴリにも当てはまらない場合は『確認が必要』として管理者に通知する」といった、人間がフォローするための例外ルートをシステム内に必ず設計しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
問い合わせ業務のAI自動化について、よく寄せられる疑問にお答えします。
専門的なプログラミング知識がなくても構築できますか?
どのような規模の企業に向いていますか?
多言語の問い合わせにも対応できますか?
AI導入を進めたいですが、社内に推進できる人材がいません。
まとめ:AIによる自動化でコア業務に集中できる環境を
問い合わせの分類と担当者への振り分けをAIで行う方法について解説しました。改めて、読者が次に取るべき行動を整理します。
- 自社で「1日にどのくらいの問い合わせ」を「誰が・何分かけて」振り分けているか現状を把握する
- 「営業」「採用」「サポート」など、振り分けるべきカテゴリの条件を社内で洗い出し、ルールを言語化する
- 入力データを学習に利用しないセキュアなAI環境(APIなど)を用意する
- プログラミング不要のノーコードツール(iPaaS)を使って、小さく連携テストを始めてみる
単純な仕分け作業から解放されることで、スタッフはより価値の高い顧客対応や本来の業務に集中できるようになります。まずは現状の課題を洗い出すところからスタートしてみてください。
株式会社ジェイテックサービスについて
株式会社ジェイテックサービスでは、AIの導入から社内定着までを伴走型で支援する「AI顧問サービス」を提供しています。企業の課題に寄り添い、実務で本当に使えるAI活用をサポートします。
「自社の問い合わせ対応フローをAIでどう自動化できるか知りたい」「何から始めればいいか分からない」という経営者・ご担当者様は、ぜひ無料相談をご活用ください。現状の課題をヒアリングし、AI活用の可能性を整理いたします。