「Teamsの容量がいっぱいです」と警告が出たとき、Teamsの管理画面を開いても容量を追加するボタンは見つかりません。
なぜなら、Teams自体にはデータを保存するストレージが存在しないからです。Teamsはあくまで「窓口」であり、実データは裏側で動いている別のMicrosoft 365サービスに蓄積されています。
この記事では、Teamsのデータが実際にどこに保存され、どの容量(テナント枠か個人枠か)を消費しているのかというアーキテクチャの基本から、容量不足による追加コストの発生を防ぐための情シス向け管理手法までを解説します。
結論:Teamsの容量管理は「SharePointのテナント容量管理」である
Teamsを使えば使うほどデータは溜まっていきますが、情シスが最も警戒すべきは「テナント全体で共有しているSharePointの容量上限」に達することです。
- 原則1:チームでの共有ファイルは「SharePoint(テナント全体の共有容量)」を消費する
- 原則2:個人チャットのファイルは「OneDrive(ユーザー個人の容量)」を消費する
- 原則3:チャットのメッセージ(テキスト)は「Exchange(メールボックス)」に保存される
- 原則4:会議の録画データ(動画)は、会議の種類によってSharePointかOneDriveに保存される(最も容量を食う原因)
OneDriveやExchangeは「ユーザーごとの大容量枠(1TBや50GB)」が割り当てられているため枯渇しにくいですが、SharePointは「1TB + (10GB × ユーザー数)」という会社全体での上限があるため、ここがボトルネックになります。
Teamsとストレージのアーキテクチャ
Teamsは、いわば複数のMicrosoft 365サービスを束ねる「フロントエンドの画面」です。
ユーザーがTeams上でファイルをアップロードすると、Teamsは裏側で自動的にSharePointまたはOneDriveにファイルを送信し、そこに保存されたファイルの「リンク」をチャット画面に表示しているに過ぎません。
ポイント:
「Teamsの容量を空けたい」という依頼に対してTeamsのチャット履歴を一生懸命消しても、ストレージ(SharePoint/OneDrive)の空き容量はほぼ増えません。重いのはテキストではなく「ファイルと動画」だからです。
容量管理を放置すると起きる“詰み”パターン
容量上限に達した時のトラブル
- 全社の業務停止: SharePointのテナント容量が100%になると、Teamsの全チームでファイルのアップロードや新規編集ができなくなります。
- 高額な追加費用: 慌てて「追加のSharePointストレージ(GB単位で毎月課金)」を購入することになり、IT予算を大幅に圧迫します。
- 会議録画の失敗: 容量がない状態でTeams会議の録画ボタンを押しても、保存先がないためエラーになります。
容量アラートが出てから不要ファイルを削除しようとしても、現場の確認待ちで時間がかかります。「テナント容量の監視と定期的な棚卸しルール」が必須です。
よくある誤解の整理
よくある誤解(情シスと現場の認識ギャップ)
- 「Teamsには無限にファイルが置ける」→ ❌(SharePointのテナント容量上限に縛られます)
- 「個人チャットで送ったファイルもチームの容量を圧迫している?」→ ❌(個人のOneDrive枠を使うため、テナント全体のSharePoint容量には影響しません)
- 「Teamsの管理画面で容量追加ができる」→ ❌(M365管理センターからSharePointの追加ストレージを購入する必要があります)
- 「ファイルタブのファイルを消せばすぐ容量が空く」→ △(SharePointのゴミ箱に入っている間は容量を消費し続けます。第1・第2ゴミ箱から完全に削除して初めて容量が回復します)
情シスが監視すべき4つのストレージ領域
① チームチャネルのファイル(SharePoint)
- テナント全体のプール容量(1TB + 10GB×ライセンス数)を消費。
- 最も枯渇しやすく、追加コスト発生の主な原因。
② 個人チャットのファイル(OneDrive)
- ユーザー1人あたり1TB(一部プランは最大5TB)。
- 容量は十分あるが、退職時のデータ消失リスク(リンク切れ)の温床。
③ メッセージ履歴(Exchange Online)
- ユーザーまたはグループごとに50GB等のメールボックス容量。
- テキストデータのため、ここで容量が枯渇することはほぼない。
④ Teams会議の録画(Stream on SharePoint)
- チャネル会議の録画 → SharePointを消費(大容量の元凶)。
- 個人のWeb会議の録画 → 録画ボタンを押した人のOneDriveを消費。
データ種別ごとの保存先と容量制限(比較表)
Teams上でやり取りされるデータが、裏側で「どのストレージ」の「どの枠」を使っているかの一覧です。
| Teams上のデータ |
バックエンドの保存先 |
消費する容量枠 |
情シスの警戒度 |
| チーム(チャネル)のファイル |
チームのSharePointサイト |
テナント全体枠 (1TB + 10GB/User) |
高(枯渇で業務停止) |
| チャネル会議の録画動画 |
チームのSharePointサイト |
テナント全体枠 (同上) |
最高(容量圧迫の主原因) |
| 個人チャットのファイル/録画 |
送信者/録画者のOneDrive |
個人枠(1TB等) |
低(枠は十分ある) |
| チャット/チャネルのテキスト |
Exchangeメールボックス |
メールボックス枠(50GB等) |
低(テキストは軽い) |
容量ひっ迫リスクと対策(情シス向け対応表)
ストレージを浪費する原因を特定し、システム的に対処する方法です。
| ストレージ浪費の原因 |
起きやすい状況 |
情シスが行うべき対策 |
| 古い会議録画の放置 |
定例会議を毎回録画し、誰も見返さないまま蓄積している |
Teams会議ポリシーで「会議の録画の自動有効期限(例:60日)」を強制設定する |
| 野良チームの乱立 |
不要になったテストチームや完了プロジェクトが放置されている |
M365グループの有効期限ポリシーを設定し、非アクティブなチームを自動削除する |
| ファイルのバージョン肥大化 |
頻繁に上書き保存する巨大なパワポやExcel(バージョンごとに履歴容量を食う) |
SharePointのバージョン履歴の保存上限数(既定500)を少なく設定変更する |
容量警告が出たときの原因特定・対処フロー
SharePointのテナント容量が90%を超えた際、情シスが取るべきトラブルシューティング手順です。
1. SharePoint管理センターを開き、「アクティブなサイト」一覧を表示する
▼
2. 「使用されている記憶域 (GB)」で降順ソートし、容量を占有している上位のチームを特定する
▼
3. チームの所有者に連絡し、「会議の録画」や「不要な大容量ファイル」の削除を依頼する
▼
4. ユーザーが削除した後、情シスが「SharePointのゴミ箱(第1・第2)」を完全に空にして容量を回復させる
▼
5. 根本対応として、全社ポリシー(動画の自動削除など)を見直す
情シスの1日の運用例(ストレージ最適化)
例:「月末にテナント容量が98%になり業務停止寸前」というアラートを受信した場合
- 10:00:M365管理センターから「SharePointストレージの上限に近づいています」の警告を受信
- 10:15:SharePoint管理センターで集計し、特定のプロジェクトチームが数TBの動画データを置いていることを特定
- 10:30:該当チームの所有者に緊急連絡。「過去の動画ファイルを削除するか、社内ファイルサーバーへ退避せよ」と指示
- 14:00:所有者から削除完了の報告。しかしSharePointの仕様でゴミ箱にデータが残り、空き容量は増えず。
- 14:30:情シス権限で該当サイトのサイトコレクションのゴミ箱(第2段階のゴミ箱)を強制クリアし、無事に容量回復。
特徴:ユーザーに「消して」とお願いするだけでは解決しません。「ゴミ箱から完全に消去する」ところまで管理することが重要です。
30日 ストレージガバナンス構築ロードマップ
追加コストを払い続ける悪循環を断ち切り、自律的に容量が最適化される仕組みを作るステップです。
Day 1-7:現状のストレージ使用量の可視化(SharePoint管理センターで上位の占有サイトをリストアップ)
▼
Day 8-14:サイトごとの容量上限(クォータ)の設定(1チームあたり100GBまで等の制限をかける)
▼
Day 15-21:会議録画の自動有効期限ポリシーの設定(Teams管理センターで「60日で自動削除」等を適用)
▼
Day 22-30:社内告知とマニュアル整備(大容量データはTeamsではなく指定のファイルサーバー等へ置く運用ルールを通達)
あなたの組織のストレージ管理 安全度チェック
不要な追加コストを払うリスクがないか確認しましょう。
- 現在のSharePointのテナント全体容量が何TBあり、何%使用しているか即答できる
- Teams会議の録画ファイルが、何日で自動削除されるか(または無期限か)把握している
- 各チーム(SharePointサイト)に対して、一律ではなく「ストレージ制限(手動クォータ)」を設定している
- Teamsのファイルを削除しても、ゴミ箱を空にしないと容量が減らない仕様を理解している
「いいえ」がある場合は、今すぐSharePoint管理センターを開き、右上にあるテナントストレージの円グラフを確認してください。
管理に必要なスキルと設定知識
必須になりやすい領域
- SharePoint管理センター(サイトごとのストレージ管理、手動/自動の設定)
- Teams管理センター(会議ポリシー > 録画と文字起こし > 自動有効期限の設定)
- Microsoft 365 管理センター(追加ストレージの購入手順とコスト計算)
- M365グループのライフサイクル管理(不要なチームの自動削除設定)
役立つ資格・関連機能
評価されやすいカテゴリ
- MS-700(Microsoft Teams Administrator Associate)
- SharePoint Onlineのサイトコレクション管理知識
- Microsoft Purviewのデータライフサイクル管理(保持ポリシーによる自動削除)
容量の棚卸しをどう始めるか?
いきなりユーザーに「ファイルを消せ」と言っても反発されます。まずは新規データの無駄をなくす(止血)ことから始めます。
おすすめの順番(安全な最適化ルート)
1. 「会議録画の自動有効期限」を60日や90日に設定し、未来の容量肥大化を止める
▼
2. SharePointの設定で、サイト記憶域の制限を「自動」から「手動」へ切り替える
▼
3. すでに大量のデータを持っている上位10チームに個別連絡し、棚卸しを依頼する
目指すべき運用体制
- 情シスが日々の容量を監視し、アラートが鳴る前に先回りで現場へアーカイブを提案できる
- 「Teamsは共同作業(一時領域)、ファイルサーバーは長期保管用」といった、社内のデータ保管方針(ガイドライン)が浸透している
高度なデータライフサイクル管理への展開
ストレージ管理の基礎ができれば、コンプライアンス要件を満たした自動ガバナンスへ発展できます。
- 手動の容量警告対応 → Microsoft Purviewを用いた「3年経過したプロジェクトデータの自動アーカイブ・削除」
- 不要データの削減による、社内検索エンジン(Microsoft SearchやCopilot for M365)の精度向上・ノイズ除去への貢献
よくある質問(FAQ)
SharePointの容量が足りなくなった場合、無料で増やす方法はありますか?
無料で増やす方法はありません。M365のライセンス数を増やす(1ライセンスにつき10GB増枠される)か、追加のSharePointストレージ(Office 365 Extra File Storage)を毎月GB単位で購入するしかありません。だからこそ日々の棚卸しが重要です。
個人のチャットで大きなファイルを共有しまくるとどうなりますか?
送信元のユーザーの「OneDrive」の容量(通常1TB)を消費します。OneDriveは一人あたりの容量が大きいためシステム全体への影響は少ないですが、退職時にそのファイルへのアクセスが失われるリスクがあるため、業務データはチームへ置くように指導すべきです。
Teams上でファイルを削除したのに、SharePointの容量が減りません。
Teamsでファイルを削除すると、裏側では「SharePointのゴミ箱」に入ります。ゴミ箱内にあるデータもストレージ容量としてカウントされるため、SharePointサイトのゴミ箱(第1段階・第2段階)から完全に削除しないと空き容量は回復しません。
まとめ
Teamsの容量管理の本質は、「SharePointのテナント共有ストレージの防衛」です。
気づかないうちに容量を圧迫する最大の原因である「会議の録画ファイル」や「バージョン履歴の肥大化」に対して、情シスが先手でポリシー設定を行うことが、無駄なITコスト削減に直結します。
1. 「TeamsのデータはSharePointとOneDriveに保存される」という構造を理解する
▼
2. 会議の録画に有効期限を設け、無駄な動画の蓄積をシステム的に防ぐ
▼
3. SharePoint管理センターで定期的に容量をチェックし、ゴミ箱のクリアまで管理する
まずは“自社のSharePoint管理センターで、使用率トップのチームを特定する”ところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の設定にあたっては、組織のセキュリティポリシーやM365の運用状況に沿って検証を行ってください。