広報部門では、生成AIを使うことで発表資料から想定質問を洗い出し、回答案のたたき台まで効率的に作成できます。ただし、AIが作った回答をそのまま対外発信するのではなく、原資料との照合と社内確認を前提に運用することが重要です。
新サービスの発表、プレスリリース、記者取材、重要なお知らせでは、事前に想定問答を準備していても、担当者だけでは質問の視点が偏ることがあります。AIを使えば、記者、顧客、取引先、社員など複数の立場から質問候補を整理できます。本記事では、想定質問と回答案をAIで作成する手順、プロンプト例、確認項目、運用時の注意点まで解説します。
- AIは想定質問の洗い出しと回答案のたたき台作成に活用する
- 回答の根拠にするプレスリリースや承認済み資料を先に決める
- 記者、顧客、取引先、社員など複数の立場から質問を作成する
- 資料にない情報をAIが推測して追加していないか人が確認する
- プロンプトと確認項目をテンプレート化すると継続運用しやすい

広報の想定質問作成でAIが役立つ理由
新商品や新サービスの発表、プレスリリース配信、記者発表などでは、公開後にどのような質問が来るのかを事前に想定しておく必要があります。しかし、発表内容を深く理解している担当者ほど、初めて情報を見る人が疑問に感じる点を見落とすことがあります。
生成AIは、同じ資料を複数の立場から読み直し、質問候補を幅広く整理する作業を支援できます。そのため、広報担当者だけで一から想定問答を作るのではなく、AIに質問候補を出させ、人が優先順位や回答方針を判断する使い方が適しています。
複数の立場から質問を洗い出せる
たとえば、新しい法人向けサービスを発表する場合でも、記者と顧客では確認したい内容が異なります。
記者は発表の背景や既存サービスとの違いを確認する可能性があります。一方、顧客は利用条件や自社への影響、取引先は既存契約との関係、社員は問い合わせを受けた際の対応方法を確認したいと考える場合があります。
AIへ質問者の立場を明示することで、このような異なる視点を短時間で整理できます。
回答案のたたき台まで作成できる
想定質問を整理した後、承認済みの発表資料を根拠として回答案を作成させることもできます。
ただし、回答案はあくまでたたき台です。AIは資料にない内容を自然な文章で補完する可能性があるため、広報担当者や関連部門が原資料と照合してから使用する必要があります。
AIの役割は会社としての回答を決めることではありません。質問候補と回答案を整理し、人が確認しやすい状態をつくることが基本です。
AIに任せやすい作業と人が判断すべき作業
広報業務でAIを活用するときは、想定問答のすべてをAIへ任せるのではなく、情報整理と会社としての判断を分けて考えることが重要です。
| 作業内容 | 向いている方法 | 主な確認ポイント |
|---|---|---|
| 発表資料の要点整理 | AI+担当者確認 | 重要事項が抜けていないか |
| 想定質問の洗い出し | AI+担当者確認 | 質問者の視点に偏りがないか |
| 質問のカテゴリ分類 | AI | 似た質問が重複していないか |
| 回答案の下書き | AI+担当者確認 | 資料にない情報を追加していないか |
| 公開可能な範囲の判断 | 広報担当者・関連部門 | 未発表情報や機密情報が含まれないか |
| 法務・契約に関する回答 | 専門部門による確認 | 法的判断や契約内容と一致しているか |
| 最終回答の承認 | 人 | 会社として正式に回答できる内容か |
特に重要なのが、回答してよい範囲を人が決めることです。AIは提供された情報から文章を作ることはできますが、どこまで公表するか、どの表現を会社として採用するかまでは判断できません。
AIには情報整理と下書きを担当させ、対外的な判断は広報担当者や関係部門が行う役割分担にすると運用しやすくなります。
株式会社ジェイテックサービスのAI顧問サービスでは、実際の業務を確認し、繰り返し使えるプロンプト、入力方法、確認項目などを実務へ組み込むための支援を行っています。
想定質問と回答案をAI作成する5つの手順
広報部門でAIを使う場合、最初から質問と回答をまとめて生成するより、資料整理、質問作成、質問選定、回答案作成、最終確認という流れに分ける方が管理しやすくなります。
プレスリリース、商品説明資料、公式サイト掲載予定情報、社内で承認されたFAQなど、AIが回答作成時に参照してよい資料を整理します。
古い資料や未承認資料が混在すると、異なる情報を組み合わせた回答が生成される可能性があります。最新版を明確にしてから利用します。
記者、顧客、取引先、社員など、誰の立場から質問を考えるのかを指定します。
さらに、概要、背景、目的、利用条件、影響、リスク、今後の予定などのカテゴリを設定すると、質問の抜け漏れを確認しやすくなります。
最初から回答まで生成させず、まず質問候補だけを一覧化します。
担当者が質問を確認し、重複を削除したり、重要な質問を追加したりしてから回答作成へ進むことで、不要な回答を大量に作ることを防ぎやすくなります。
回答案を作る際は、提供した資料だけを根拠にするよう指示します。
資料だけでは判断できない質問については、AIに推測させるのではなく、社内確認が必要と出力させます。
AIが作った回答案について、プレスリリースや承認済み資料と一つずつ照合します。
価格、日付、数値、今後の計画、契約、セキュリティ、法務に関する内容などは、必要に応じて関連部門へ確認してから回答として確定します。
- AIが参照してよい資料を決めている
- 最新版の資料だけを利用している
- 質問者の立場を決めている
- 質問カテゴリを決めている
- 回答してはいけない情報を整理している
- 資料にない内容を推測しないよう指示している
- 回答案を原資料と照合する担当者を決めている
- 必要に応じて関連部門へ確認する流れを決めている
広報部門で使えるプロンプト例
AIで想定問答を作成するときは、単に質問を考えてくださいと依頼するのではなく、質問者、分類方法、回答の根拠、禁止事項まで明確に指定することが重要です。
想定質問を洗い出すプロンプト
以下に入力する発表資料を確認し、発表後に想定される質問を整理してください。
質問者:
・メディア
・顧客
・取引先
・社員
質問カテゴリ:
・発表内容の概要
・発表の背景と目的
・対象者への影響
・利用条件
・懸念やリスク
・今後の予定
出力項目:
1. 質問者
2. 質問カテゴリ
3. 想定質問
4. 重要度を高・中・低で表示
ルール:
・資料に記載されていない事実を追加しない
・似た質問は統合する
・発表内容に対して批判的な視点からの質問も含める
・この段階では回答案を作らない
回答案を作成するプロンプト
回答は、この会話で提供した発表資料に記載されている情報だけを根拠にしてください。
出力項目:
1. 想定質問
2. 回答案
3. 回答の根拠となった情報
4. 追加確認が必要な点
ルール:
・資料にない情報を推測で補完しない
・数値や日付を新しく作らない
・確定していない将来計画を断定しない
・回答できない場合は社内確認が必要と表示する
・回答は口頭でも説明しやすい簡潔な文章にする
質問作成と回答作成を分けることで、AIが不要な質問にまで回答を作ることを防ぎ、担当者が重要な論点を確認してから次の作業へ進みやすくなります。

AIで回答案を作る際に注意すべきこと
広報部門が扱う情報には、公開前の発表内容、取引先情報、将来計画など機密性の高い情報が含まれる場合があります。想定問答の作成にAIを使う際は、回答精度だけでなく入力する情報の管理も重要です。
資料にない内容をAIが補完する可能性がある
生成AIは文章として自然な回答を作ることを得意としています。その一方で、提供資料に書かれていない背景や理由を、もっともらしい文章として追加する場合があります。
回答案を確認するときは、文章が自然かどうかではなく、その内容を裏付ける情報が承認済み資料に存在するかを確認します。
未発表情報を入力してよいか確認する
記者発表やプレスリリース配信前の資料には、まだ一般公開されていない情報が含まれています。
利用するAIサービスの契約形態、入力データの保存や利用条件、自社のAI利用ルールなどを確認し、会社として利用を認めた環境で作業することが重要です。
回答できない質問への対応方針を決める
想定問答では、すべての質問へ具体的に回答できるとは限りません。未決定事項、非公開情報、個別契約に関する情報などは、回答できる範囲をあらかじめ決めておく必要があります。
AIに無理に回答を作らせず、確認が必要な質問として分類することで、誤った回答を準備してしまうリスクを抑えやすくなります。
専門判断が必要な回答は担当部門へ確認する
法務、知的財産、契約、個人情報、情報セキュリティなどに関する質問は、広報担当者だけでは判断できない場合があります。
AIの回答を最終回答として扱わず、必要な内容は専門部署や担当者へ確認するフローを作っておきます。
AIが文章として回答できることと、企業が公式に回答してよいことは別です。情報の正確性だけでなく、公表してよい範囲と社内承認まで確認してください。
想定問答を実際の広報業務へ組み込む方法
AIで想定質問と回答案を作る目的は、単にQ&A一覧を作ることではありません。発表前に重要な論点を見つけ、必要な社内確認を済ませ、実際の問い合わせや取材へ対応できる状態を作ることが重要です。
質問を重要度で分類する
AIで質問候補を大量に作ると、実際には発生可能性が低い質問も含まれます。そのため、発生可能性と回答を誤った場合の影響を考慮して優先順位を付けます。
特に、価格、契約条件、個人情報、障害、安全性、今後の事業計画など、回答内容によって影響が大きくなる項目は優先して確認します。
これは説明のために仮定した例です。
- プレスリリースとサービス説明資料を準備する
- 記者、顧客、取引先の立場からAIに質問候補を作らせる
- 質問を背景、料金、対象者、利用方法、リスクなどに分類する
- 広報担当者が重要な質問を選ぶ
- AIに承認済み資料だけを使って回答案を作らせる
- 資料から回答できない質問を各担当部署へ確認する
- 確定した回答を想定問答集としてまとめる
- 発表後に実際に出た質問を追加して次回へ反映する
実際に聞かれた質問をテンプレートへ追加する
AIが事前に想定した質問と、実際の取材や問い合わせで聞かれた質問を比較すると、次回以降の精度を改善できます。
毎回ゼロからプロンプトを作るのではなく、頻出質問、確認が必要な項目、質問者の種類などを部署共通のテンプレートとして管理すると継続利用しやすくなります。
AIだけでなく社内確認フローも標準化する
想定問答作成を効率化しても、回答確認のたびに誰へ確認すべきか分からなければ、発表準備全体は効率化しません。
サービス内容は事業部門、契約は法務、データ管理は情報システム部門など、質問カテゴリごとの確認担当者を決めておくと、AIで作った回答案を実務へつなげやすくなります。
広報部門のAI活用に関するよくある質問
広報部門で想定質問や回答案の作成にAIを取り入れる際によく生じる疑問を整理します。
AIが作った回答案をそのまま記者へ回答してもよいですか?
そのまま使用するのではなく、必ず原資料と照合し、会社として回答してよい内容か確認してください。AIは資料にない情報を補完する場合があるため、最終回答は広報担当者や必要な関連部門が判断する運用が適しています。
プレスリリースだけでも想定質問を作れますか?
作成できます。ただし、プレスリリースだけでは回答できない質問が多くなる場合があります。商品説明資料、利用条件、承認済みFAQなども準備すると、より実務に使いやすい想定問答を作成しやすくなります。
想定質問は何問くらい作ればよいですか?
適切な件数は発表内容によって異なります。最初は幅広く質問候補を作り、その後に発生可能性や重要度で絞り込む方法が実務的です。質問数そのものより、重要な論点が抜けていないかを確認することが大切です。
公開前の資料を生成AIへ入力してもよいですか?
一律には判断できません。自社の情報管理ルールと、利用するAIサービスの契約条件やデータ取扱条件を確認してください。入力可否が確認できない場合は、機密部分を除いた資料を使って試す方法もあります。
想定質問以外に広報部門ではAIをどのように使えますか?
プレスリリースの構成案作成、過去の問い合わせ分類、取材メモの整理、FAQ候補の抽出、発表資料からの説明ポイント整理、社内向け説明文の下書きなどにも活用できます。対外発信する最終文章は人が確認する運用が重要です。
まとめ
広報部門で想定質問と回答案をAI作成する場合、AIへ会社としての回答を任せるのではなく、質問候補の洗い出しと回答案の下書きを効率化する使い方が実務的です。
特に、複数の立場から質問を考える作業や、承認済み資料をもとに回答案を整理する作業はAIと相性があります。一方、事実確認、公表範囲、専門判断、最終承認は人が担当する必要があります。
- 回答の根拠にする承認済み資料を先に決める
- 記者、顧客、取引先など複数の視点で質問を作成する
- 質問と回答を分けて段階的にAIへ作成させる
- 資料にない内容をAIが追加していないか確認する
- プロンプトと社内確認フローをテンプレート化する
最初から広報業務全体をAI化する必要はありません。まずは一つのプレスリリースや発表案件を対象に試し、実際に聞かれた質問と比較しながら運用方法を改善していくことが重要です。
株式会社ジェイテックサービスのAI顧問サービスでは、企業の業務を確認し、AIを活用しやすい業務テーマの整理、プロンプトや入力形式などの業務テンプレート作成、AIツール選定、リスク対策、運用後の改善までを支援しています。
広報業務についても、想定質問や回答案を作成するだけでなく、どの資料を使い、誰が確認し、どの段階で利用するのかまで業務として整理することが重要です。
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